大塚国際美術館
photo by @hyslly
大塚国際美術館の基本情報
【スポット】大塚国際美術館
【ふりがな】おおつかこくさいびじゅつかん
【 住所 】〒772-0053 徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65−1
【アクセス】JR鳴門駅からタクシーで約15分
【最寄り駅】鳴門駅
【営業時間】9:30~17:00(入館は16:00まで)
【 料金 】一般3,300円、大学生2,200円、高校生以下無料
【クーポン】公式ウェブサイトで割引クーポンを提供
大塚国際美術館
が含まれる観光マップ
「絵画になんて縁がない」そう思う人にこそ行って欲しい大塚国際美術館
大塚国際美術館の概要
大塚国際美術館は徳島県の鳴門市にある、非常に個性的な美術館です。「渦潮」で大変有名な同地域に於いて、孤高の存在として君臨しており、昨今ではTVや雑誌でも取り上げられる事が多く、また、外国人の訪問者も増加しています。
当方も「絵画には縁が無い」人間ですが、ここはそういう人にも楽しめる非常に面白い場所でした。また機会があれば行ってみたいなと思わせる、素敵な場所でした。
大塚国際美術館へのアクセス
基本的に、自家用車以外でのアクセスはかなり不便だとお考えください。近隣の鳴門の渦潮観光なども踏まえれば大半の方が自動車だと思いますが、バスや鉄道でのアクセスも可能です。その場合は美術館の滞在希望時間や、渦潮が大きく見える時間、移動のバス時刻など、諸々の情報を総合・統合した計画を必要とします。
自動車アクセス
神戸淡路鳴門自動車道を利用し「鳴門北IC」で下りて左。美術館専用の無料パーキングまで5分もかかりません。無料パーキングからは美術館までシャトルバスで移動。バスは駐車場から5~10分間隔程度で随時発車しています。(個人的に伺ったお話では、美術館からモニターで利用者を把握しており、極力待たせないように運行しているそうです)
各種高速バス
岸和田=なんば=JR神戸=大塚国際美術館という直通便があります。また、全国各地から「徳島」へ向かう、昼行・夜行バスも利用可能で、この場合は「高速鳴門」にて下車。高速道路本線上から「すろっぴー」というスロープカーで地上へ降ります。ここから美術館へは路線バスになりますが、毎時1本程度の運行頻度なので事前に入念に時刻を調整しましょう。併設の観光センターでタクシーを呼ぶと美術館まで15分程度です。
JR
JRの徳島駅や鳴門駅から路線バスの利用が可能です。こちらも毎時1本程度の運行頻度で、前後の行程をかなり綿密に組む必要がありますので、ご注意ください。
大塚国際美術館と陶器の板の物語
美術館の名称の通りですが、この美術館は医薬品で名高い「大塚製薬」と深い関わりがあります。大塚製薬の発端である製薬工場の創業地が、この鳴門市でした。
この美術館の誕生は、それから実に75年後、1998年のことでした。創業75年という節目の記念事業として、創業地・鳴門での開園が実現します。しかし、美術館の開園に向かって動き出したのは、開園から27年も前のことでした。往時はまだ美術館を建てるという計画すら無く、小さな一歩は当時の社員の提案に過ぎませんでした。
ある日、当時の社員2名が社長室の扉を叩きます。彼らが社長に見せたものは、大塚製薬鳴門工場にほど近い鳴門浜・鳴門海峡の「白砂」でした。その美しい白砂は建築材料としても大変優秀で、当時、既に鳴門の産業として主に阪神圏への出荷がビジネススタイルとして確立していたと言われます。
一方でこの大塚製薬の社員らは、これを「焼成」して「タイル(板状の陶器)」を生成することを思いつきます。地元の特産品である白砂を加工し、付加価値を生み出し、大塚製薬の新たな部門として事業化するという「直談判」に出たのでした。当時の社長は、その社員2名の熱意に心打たれ、採石・採砂の許可を県知事に求めました。なんでも、この社員たちは「社長がタイル事業を認めてくれなければ、会社を辞する」という決死の覚悟にも似た物を抱いており、社長も即座に県知事とコンタクトをとったという逸話が残されています。
認可を得て、大塚製薬の未知への挑戦が始まりました。製薬とは全く異なるものでしたが、タイル制作は徐々にレベルを高めていきます。製薬で養った緻密なアプローチは新事業でも引き継がれ、早い段階から、目覚ましい成果を出すようになりました。自社の技術だけでハイクオリティな製品を生み出すに至りますが、更には「信楽焼」で有名な滋賀県信楽の陶磁器会社の門を叩き、製造技術の向上を図るという徹底ぶりでした。
当時、アメリカのような先進国ですら高精度な陶板生成には手を焼いていたとされる時代、大塚製薬はそれをはるかに上回る精度で安定して生成できたと言われます。こうして生み出された製品は実際に建築材料として全国出荷が検討される水準にまで達しました。しかし1973年のオイルショックで建築・建設業界が大打撃を受け、多くの工事が頓挫。大塚製薬の陶板は出荷先を見出す事が出来ず、壁にぶつかりました。
これが運命の分岐でした。行き先を失った陶板に「絵を描いて売ろう」「美術品としての価値を見出そう」という苦肉の策です。大きな陶板の魅力を最大限発揮する題材として「屏風絵」に着目。日本を代表する文化財でもある、尾形光琳の燕子花図が採用されました。この燕子花図は原寸が151.2cm × 358.8cmという大きさでしたが、この時点で、このサイズの陶板を問題無く焼成する技術水準を有していました。この大型の陶板に原寸で絵画を焼き付けていくという発想が、現在に続く、大塚国際美術館の最大の強みとなります。
転機は続きます。大塚製薬の重役が医薬品の契約でロシアを訪れ、墓地を視察した際に「墓石に色褪せた写真が貼ってある」事に気がつき、それを「陶板に焼き付ければ風雨でも色褪せはしない」という事実に気がつきます。追って、古い沈没船を引き揚げる際などに、陶磁器だけは一切色褪せずに残ってるという事にも気がつきました。陶に焼き付けた柄や絵は未来にわたっても色褪せない芸術品であるという、確固たる根拠を得るに至ったのです。
こうした背景があって、美術館開館を創業75年の節目を目処とする事や、創業地・鳴門で開館する事も徐々に定まっていき、そこからは、世界各地の美術品の陶板コレクションが始まりました。今や、世界の名画が集う特別な美術館として大きな注目を集めています。
大塚国際美術館の特色
1,000点を超える西洋の著名な絵画が鑑賞できます。美術に全く関心がない方でさえ、これは見た事ある、あれは知っているという、教科書掲載レベルの世界的名画の宝庫ですので飽きる事はないでしょう。
また、この美術館の最大の特徴である『展示品に触れてOK』『展示品の撮影OK(三脚やフラッシュ利用禁止)』という条件は、美術好きは勿論、何よりもSNS映え抜群。人気作品の前でポージングをしてみたり、名画の中に入ってみたりとイマジネーションを掻き立てられる場所です。館内は大変広く、全てを見て歩くと4km程度歩きます。ツアーなどでも滞在時間が180分程度組まれているケースが多く、著名な作品だけ駆け足で見て60分強、普通のペースでも120分程度は必要になります。絵画に詳しい方ですと、1日いられるレベルの場所です。
昨今、大塚国際美術館は様々な用途で注目を集めており、結婚式やコンサートなどでも注目されている他、先述のSNS映えが期待出来る事から、いわゆる「撮影目的」の人々も増えています。絵画の題材となっている人物と同じ格好、服装を用意してきて撮影している方などを見かける事もあります。
一般的な美術館とは明確に一線を画す場所で、肩肘張らずに楽しく「散策」できることも大きな特徴でしょう。美術作品を身近に感じる、というのは、こういう場所のことを言うのかもしれませんね。
料金・付随施設
入場券は全国の主要なコンビニで購入可能です。こちらは前売り券となり「3,100円」です。当日券は「3,240円」となります。
主な付随施設はカフェ、レストランやミュージアムショップです。この美術館の近隣には、徒歩で気軽に行ける食事処が無いので、美術館で食事をする方も多いでしょう。鳴門の名産品である鯛やワカメを用いたお食事や、絵画をコンセプトにしたメニューなどもあり、絵画鑑賞の間の休憩にもお勧めできます。
ミュージアムショップでは、陶板絵画が購入できたり、展示絵画のアートグッズなど多数の品揃えです。決して色あせない陶板絵画はお土産などにも喜ばれそうです。
大塚国際美術館:訪問記
アクセスは「困難」と書いていますが、当方は路線バスで美術館にアクセスしました。美術館から渦潮まで歩いて往復していますし、計画さえきちんと組めれば不可能ではないという事をお伝えします。渦潮が最大になる大潮の時間を中心に組んで、美術館=渦潮=美術館という方法も可能。受付にお伝えすると再入場の手続きをしてくださいます。
「料金」が3,000円を越え、高額であることも、この美術館の1つの特徴かもしれません。これを高いと見るかは個人差の範囲ですが、十分に行く価値があると思います。1度行けば決して忘れない、強烈な印象を残す施設です。圧倒的な独創性で唯一無二の美術館です。
美術館は本当に広かったです。ですが、教科書に掲載されているレベルの絵画しか知らない私でも、画家の名前と絵のタイトルまで言えてしまうものが散見されます。当方の訪問はいわゆる閑散期だった事もあって、どの絵もほとんど貸切状態でした。じっくり見てみたり、触って、写真を撮ってみたりと、非常に楽しかったです。
絵画全般が好きな方、特定の作品が好きな方は勿論ですが、本当にどこを歩いても「知ってる」絵が飾られている感覚で、ちょっとした美術巨大迷路と言う事もできます。
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